京都鉄道博物館の内覧会と新緑の洛南を訪ねて (2016-04-20)


本館1階に展示されている車両群
 今年のGWから装いも新たに京都・下京区に誕生した京都鉄道博物館は、家族連れなどに予想以上の人気だったようですが、そのオープン前の内覧会に、JR西日本の招待で当協会からY氏とT氏、そして小生の3名が参加しました。
 この地は、平安遷都1200年を記念して建設された梅小路公園に隣接し、JR西日本の蒸気機関車(SL)を大量に保存する梅小路蒸気機関車保存館、旧二条駅舎がありましたが、大阪・天王寺にあった交通科学館の展示品などを移設し、新たに3階建ての本館を建設、楽しみながら鉄道の歴史・技術・安全・文化を学べる鉄道文化の拠点と位置付けています。
 何故、当会の会員が参加したかというと、明治時代の後半以降、当時の鉄道の動力車であった蒸気機関車の大型化に伴い、その機関車の車庫も規模を大きくする必要があり、従来の木骨煉瓦造りからフランスのアンネビック社が特許を持つ鉄筋コンクリート構造へ移っていきました。その生き残りが当時の面影をそのまま残している梅小路機関車庫で、同社が設計も担当したという説もあり、鉄道における日仏交流の一端に触れてみようというものでした。
 鉄道における鉄筋コンクリート工法導入の第1号は、1907年に完成した山陰本線の島田川暗渠(島根県安来市)と言われていますが、線形車庫としては東海道本線の国府津機関庫(神奈川県小田原市)が1910年に完成しています。当時の東海道本線は丹那トンネルが開通しておらず、山線(現在の御殿場線)を通るため、国府津に大規模な機関区が設置されていました。
 引き続き、建設された梅小路機関車庫は、1914年11月に完成しましたが、わが国最古の機関車庫として原型を留めています。扇形車庫の収容台数20両というビックなものですが、現在は、各線の入り口を仕切るようにコンクリート構造が昔のままで残っており、20両の機関車の内、8両は動態保存で、「SLやまぐち号」の牽引機などとして活躍しているのはご存じでしょう。さらに扇の要の位置には転車台も現存していますので、本当に歴史の証人としての役割は大きく、鉄道記念物や国の重要文化財に指定されているものも沢山あります。
 まあ、華やかにフットライトを浴びるSLと違って、入れ物としての扇形車庫にフランス製のコンクリートが使われているだけですが、100年ちょっとの歴史の深さと重みを感じる建造物といえるのではないでしょうか。当時を偲んで一見の価値はあると思いますし、構内ではSL列車の体験乗車も可能です。
 新たに建造された本館を始めとする全体の概要ですが、 展示品は「鉄道のあゆみ」が15項目に分類され、実物や資料で、分かりやすく説明されています。特に車両は先のSL20両を含み53両が展示されており、明治10年代に活躍した7100形や1800形から新幹線で初めて時速300km運転を実現した500系まで幅広く集められています。さらに国鉄バスや連絡船、貨物輸送、関西の私鉄などの展示コーナーもありますし、ジオラマや運転席などの実体験できる設備も充実しています。
なお、同博物館へのアクセスは京都駅からバス利用ですが、将来はJR嵯峨野線に新駅を設置し、利便性の向上に努めるそうです。
 JR西日本の京都鉄道博物館のオープンで、JR東日本の鉄道博物館(さいたま市大宮区)、JR東海のリニア・博物館(名古屋市港区)とそれぞれの持ち味を生かした鉄道博物館が揃いました。
我々3名は午後から京都の春を楽しむため、新緑が眩しい洛南の名刹を訪ねました。最初の東福寺は秋の紅葉で有名ですが、スポットの通天橋から見るカエデの新緑も素晴らしいものがありました。秋の紅葉シーズンからは想像できないほどゆったりと鑑賞できました。この寺のもう一つの目玉は八相の庭と命名されている方丈。近代の庭園家重森三玲が作庭した枯山水庭園は見事で、廊下に座って眺めている外人の姿が目立ちました。このほか真言宗の泉湧寺や今熊野観音寺などを散策し、京の春を楽しんだ一日でした。

会員 H.K.


見事な東福寺の新緑

アンネビック社のコンクリート製の梅小路機関車庫