秋の甲州ワイナリー視察の旅 ―国産ワインも美味でした― (2015-10-18)

 果物王国、山梨の秋の味覚の代表は、何と言っても生産量全国一を誇る葡萄であろう。この時期はブドウ狩りやワインを求めて観光客が大挙押し寄せる。
 当会の秋のツアーも、T会員企画の「秋の甲州ワイナリー視察」。秋の1日、フランスのワイン造りに学んだわが国のワイン発祥の地の原点と現状に触れる旅を楽しんだ。

 10月中旬、高台にあるJR中央線「勝沼ぶどう郷駅」駅頭に降り立った一行5名の眼に飛び込んできた晩秋の甲府盆地は、一面をセピア色のぶどう畑で被われていた。これから始まる旅の予感は高まるばかりであったが、思わぬアクシデントが一行を襲う。何と駅前から乗車予定のバスが運休というのだ。この日は年に1度の甲州市民マラソン大会で、全国から数千名のランナーが参加するとあって、コースにあたる道路は車両通行止め。綿密なプランを作成していた幹事さんもこれは計算外。勿論、タクシーにも乗れず、「歩くしかない」との結論で、思いがけない珍道中がスタートした。

 幸い道は下りで、左手にブドウ畑、右手を走りすぎる老若男女のランナーに声援を送りながら旧甲州街道の国道34号線との合流点へ。更に上町から勝沼氏館跡を横目に日川橋を渡り、近道と思われるブドウ畑の小道をかいくぐって目的地のシャトー・メルシャンに到着したのは12時ごろ。

 早速、レストランでワイン付きのランチを注文、本日、1杯目のワインは白の甲州ワイン。もう1杯の気持ちをぐっと我慢して、用意されたワイナリーツアーのスペシャルコース(1000円)に参加、若き女性のワインアドバイザーの案内で、まず、勝沼ワインの出来るまでのビデオを見たあと、樽詰めのワインが眠る地下の保管庫を見学、そのスケールに圧倒される。お目当ての5種類のワインのテスティングを体験し、ほろ酔いに。
 場所を移して資料館では、そのルーツをしっかり勉強、屋外に出て、わが国ではまだ少ない垣根仕立て(大半は棚仕立て)のブドウ園を視察し、収穫を待つ珍しい葡萄を摘む恩恵にもあずかった。しかし、説明に熱が入りすぎて、時間を大幅に超過、2つ目の盛田甲州ワイナリ―はカットし、動き出したバスに乗って最後のぶどうの丘に向かった。

 それではワイナリーで教わったことを幾つか紹介しよう。甲州ワインのルーツは、1877年にわが国初の民間ワイン会社として設立されたメルシャンの前身である大日本山梨葡萄酒会社。醸造の基礎を学ばせるため、19歳の土屋龍憲と21歳の高野正誠の2名をフランスに派遣し、ピエール・デュボンに学んだという。フランスに技術を継承していることに、今回の当会のツアーに選んだ意義を見る。余談だが、現存する最古の醸造元(宮崎第一醸造所)はワイン資料館の宮古園としてすぐ隣に残っていた。

 小生が最も楽しみにしていたテスティングは、白3、赤2の5種類の試飲。
軽いものから重いもの、辛口から甘口の順に、色、香り、味をみていくようだが、最初の一口とタンブラーをゆすりながらの違いを瞬時に感じた時は少し通になった気がしたのは私だけだっただろうか。
 参考までに2013年ものは天候に恵まれ、良質なものが多く、白はまろやかなうちに早く、赤はじっくりと寝かせると一段とコクのある美味いワインになる、というアドバイスを受けた。

 次はぶどうの木の育て方でひとつ。まず、木は芽のある枝を1本だけ残し、全てを落とすとか。冬の甲州街道を歩いている時、ぶどう畑が妙に殺風景だったのを思い出した。そして自然のままに育てるので、水もやらず雨水だけ、風が吹こうが天候が荒れようがそのまま。このストレスを与えることが実をならす秘訣だそうだ。「ワインつくりは農業です」という言葉が印象的だった。

 最後のぶどうの丘は、甲府盆地を360度一望できる場所で、遠くの南アルプスの山々も壮観だ。駅にも近く、ホテルのほか行楽施設も整い、約180銘柄のワインの試飲も楽しめる。ここでわれら一行は思わぬサプライズに遭遇するが、締めも近いので、内緒にし、最後の7杯目のワインを駅の売店で購入し、想像以上に混雑していた「はまかいじ」の車中で飲んだ味は最低だったことをこのツアーの最後の報告とする。

会員 H.K.