クレマチスの丘散策(ヴァンジ彫刻庭園美術館、ベルナール・ビュフェ美術館) (2013-09-22)

 またもや好天に恵まれた9月22日日曜日、かながわ日仏協会の散策が始まった。 横浜、戸塚、大船から乗る会員と共に、JR東日本で熱海へ、それからJR東海で三島まで行き、シャトルバスでこの度の目的地である、クレマチスの丘を目指す。
 車窓はその土地土地の風景を映し、左に海を見ると、右に少し色づいたみかん畑、そして赤い彼岸花を見つけては、会員達は首を右へ、左へ振り、秋の風情に興じる。 彼岸花の朱色は秋の空に映え、美しい。
シャトルバスは、緩やかな勾配を登りクレマチスの丘に着いた。丘の上は樹木が生い茂り、光は透明感を増し、空気がおいしい。
 我々はこれから始まる美術館巡りに、まず腹ごしらえと、昼食を取ることにした。目に入る草木の濃淡が心地よいテラス席で、イタリアンを皆でいただく。ふと「同じ釜の飯を分け合った仲間」という言葉が私の頭をよぎり、我々も会の時を重ね、食を共にし、この時を共有していることを感慨深く思う。

《三つ編みの女》
ヴァンジ彫刻庭園美術館
 時折吹く風は心地よい。
お腹も満たされたところで、このクレマチスの丘の一つの見所であるヴァンジ彫刻庭園美術館へ・・・。
 入口を入ると視界が広がり、高く青い空の下、手入れの行き届いた芝生が緩やかに下降し、涼風が我々を迎えてくれた。その天と地の間にヴァンジの彫刻が立っていた。身体はある者は木の中に、ある者は石の中に埋もれ、または融けていく様子であるが、顔は強く何かを語り、心に深く届く。
 美術館の入口は2階で、コンクリート打放し工法である。1階に降りていくと、何体もの彫刻が薄暗いが観るのに具合のよい調光で点在していた。広場の彫刻と同じく強く何かを語る。《歩く女》などは薄い衣服から中の身体の肉が弾んでいるのが分かり、しっかり前を見据え躍動感を持って目の前を通り過ぎていくようである。
私の足音と共に心は動く、感銘を持って・・・。そんななか足を進めると《三つ編みの女》が立っていた。  ああ、また会えた。また・・・。
私は何年も前に、何の目的もなく、ヴァンジを知るよしもなく、ここを訪れたことがある。そしてここでこの《三つ編みの女》に出会った。彼女のわずかに開いた目は、静かに遠くを見ているようでもあり、幾多の困難と喜びを経験し乗り越え、永遠を見ているようである。そう、このお顔はどこか仏像を思わせる。ともかくまた会えた。外に足を進めるが、すぐまた会いたくなるのがこの《三つ編みの女》である。  また来よう。
 戸外に出ると園庭に陽は降り注ぎ、トレリスに巻きついたクレマチスがポツンポツンと咲いていた。この夏の暑さに耐えてきた花の様子である。会員達はそれぞれに歩き回り、クレマチスにカメラを向けたり、池の睡蓮に止まるトンボを撮ったりと、その姿はさながら撮影会のようである。

銀ヤンマ
 その後、園内の移動バスでほとんど知らない人はいないであろう、フランスの画家ベルナール・ビュフェの館へ・・・。創設者、岡野喜一郎氏は「第二次世界大戦の荒廃が残る1950年代前半、これらの絵に出会い、20世紀の時代の証人として残すため美術館の創設を決意した」とある。
 ビュフェ、ビュフェ、ビュフェとめどもなくビュフェ。本当に良くこんなに集められたとばかりに、2,000点もの収蔵を見せる。サインまでビュフェはビュフェたらん。どうやら世界一のビュフェコレクションであるそうだ。
 この喜一郎氏のお蔭で、今、私たちはこの丘でビュフェを観ることができる。彼ら、 ビュフェ、喜一郎氏は死してもなお、ここで我々に彼らの思いを伝え、次の世代につないでいる。
 この心地よい風吹くクレマチスの丘で、それぞれの会員がそれぞれの受け止め方で何かを持ち帰るであろう。
 そして私たちは帰途についた。

会員 Mrs.Ikuko


クレマチスの丘 散策 写真集


クレマチス


ヴァンジ彫刻庭園美術館入口


《竹林の中の男》


《壁をよじ登る男》


《三つ編みの女》


《黒い服の女》


《天の階段》


ヴァンジ美術館庭園内


《穴のあいた木と男》


銀ヤンマ


睡蓮


バラ


くじゃく草と青筋アゲハ


ベルナール・ビュフェ美術館入口


駿河平自然公園 吊り橋

ウェブサイト: ヴァンジ彫刻庭園美術館 | クレマチスの丘 | ビュフェ美術館

photo: k.tsuruta, n.takada